法人概要

ごあいさつ

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公益財団法人 北海道演劇財団
理事長  斎藤 歩

 今年2月、感染症の急激な拡大に直面していた札幌で「虹と雪、慟哭のカッコウ」を札幌文化芸術劇場hitaruクリエイティブスタジオで上演していた私たち北海道演劇財団は、2月28日に3回の公演を残して公演の中止を決定しました。あれ以来、ほぼすべての劇場のドアが閉ざされ、この半年の間私はただただ、ステージドアをいかに再びこじ開けるかを考え続けていました。

 そんなさ中、2020年6月25日、この財団法人の理事の皆様は私のような者を7代目理事長に選びました。これまで歴代6名の理事長の方々がいらっしゃいますがいずれも、北海道の経済界を背負っていらっしゃる方ばかりでした。そんなポストに私のような一介の演劇人が就任することに大きな違和感を感じていましたが、秋山前理事長の確信に満ちたお言葉と態度に推され、お引き受けすることといたしました。秋山前理事長と、北洋銀行の石井会長が副理事長として支えてくださるとお約束してくださったことが、何よりも私の決断を後押ししてくださいました。

 理事長に就任して間もない7月、ようやくシアターZOOを開場し、お客様をお招きして「ぐりぐりグリム~長靴をはいた猫」を上演し、一人の感染者も出すことなく無事に終えることができました。また8月15日~22日には、札幌演劇シーズン2020-夏のメインプログラムとして「フレップの花、咲く頃に」をかでる2.7ホールで上演。8月25日には江別市えぽあホール、27日には名寄市EN-RAYホール、いずれの公演も各地の公立劇場において、閉鎖後初めてお客様をお迎えした演劇の事業として実施された公演でした。

 シアターZOOでは桟敷席のある客席のリスク評価の結果、靴底消毒の必要性を認識し、独自に消毒マットを導入したり、受付カウンターはビニールシートを張り、すべてのお客様の連絡先をお預かりするなど、ご来場のお客様すべてに感染症対策へのご協力をお願いしました。稽古場施設や劇場に出入りするスタッフ・出演者全員には朝晩の検温の他、行動抑制にも協力してもらい、会食の自粛、入退館時の検温・手指消毒・うがいを義務付け、フェイスシールドを着用した稽古やリハーサルに耐え続けてもらいました。舞台最前列と、最前列客席の飛沫感染リスクを避けるための距離確保など、取り組まなければならない課題は山ほどありましたが、今、これら厳重な感染症対策を施した2つの公演を何とか無事に終えることができ、9月10日には「フレップ」名寄公演ツアー最終日から2週間が経過しましたが、関係者やお客様の中からの発熱・発症の報告もなく、劇場で集団感染を発生させないことを目指した取組が一定の成果を上げたと判断しています。コロナ禍でも劇場にお客様をお迎えするという事を目指して半年間努力を続けてくれた関係者の皆様には、本当に感謝しています。そして何よりも、こんな状況であっても劇場に足を運んでくださり、生の劇場演劇をご観劇くださった多くの観客の皆様にも力を貰いました。本当にありがとうございました。

 こうして7月に何とかステージドアをこじ開けることはできましたが、これまでの間、いくつもの貴重な公演を中止・あるいは延期せざるを得ませんでした。6月に予定していた、私(斎藤歩)と東京の俳優・小嶋尚樹さんとの二人芝居「孤独な惑星」と、9月に予定していた鄭義信さんの新作「五月、忘れ去られた庭の片隅に花が咲く」は、いずれも東京から俳優・演出家・劇作家・スタッフを札幌に招き、札幌で創り初演し、東京でも公演する予定だった作品でした。全国からも注目を集め期待の大きかった作品でしたが、この間の東京での感染拡大状況から、断念・延期せざるを得ませんでした。

 とにかくこの半年の間、我武者羅に走り続けていたため、肝心の理事長就任のご挨拶がこんなにも遅れてしまいました。深くお詫び申し上げます。

 2015年の夏、まだ私が東京で俳優・演出家の仕事をしていた頃、当時の理事長・秋山孝二さんと、専務理事・田渕勝利さんが私が所属する芸能事務所に私と事務所の社長、マネージャーを訪ねていらっしゃり、私を理事として北海道に連れ戻したいと頭を下げられました。そして2016年春、私は東京の自宅を引き払って札幌に移住し、その年の6月の理事会で正式に、演劇財団の常務理事・芸術監督として迎えられました。

 秋山前理事長から最初に命じられたのは「中期計画の立案」でした。そこで私は2016年~2020年にわたる5ヵ年計画を理事会に提出し承認を受け、一目散にその計画に従い働いてまいりました。「財務の健全化」「創造作品のブランド力向上」「人材育成・アウトリーチ事業の強化」その三本柱に集約した様々な改革を2020年までに成し遂げようと、初年度の2016年度、そして2年目の2017年度、今となっては何をやっていたのか覚えていないほど必死でした。次々に迫られる経営判断に窮して、何度も当時の秋山理事長に泣きついたことだけははっきりと覚えています。そのたびに秋山さんはブレることなく、私の改革の方向性を支持してくださり、力強いお言葉と行動で励まし続けてくださいました。どんな時にも明るく前向きに課題に体当たりし続けてくださり、毎日私の右隣の席で支え続けてくださった当時の田渕専務理事にも本当に助けられました。田渕さんがいらっしゃらなかったら私の改革は頓挫していたことは明らかです。そんなお二人と、必要以上に健康で明るく残業を一切しない二人の常勤職員たちに支えられ、改革3年目となった2018年度には「財務の健全化」として掲げた中期目標をほぼ達成することができ、私は専務理事・芸術監督となり、札幌文化芸術劇場hitaruのオープニングの一翼も担わせていただけた幸運も相まって、東京から多くの先輩演劇人や戦友たちを札幌に招くことで「創造作品のブランド力向上」の点でも確かな成果を残すことができました。2019年度には私より一世代若い3名の札幌の演劇人を理事として招き、「人材育成・アウトリーチ事業の強化」も確かなものになりつつあります。そして2020年度、理事長に推挙され次の5か年計画の立案を私よりも若い新しい理事たちと開始した矢先に、私たちはこの感染症の拡大に直面しているのです。

 「縮小均衡から緩やかな拡大局面へ」と当初位置付けていた次の中期計画も、大きく変更を迫られています。大変な時期に理事長を引き受けることになりましたが、こんな時期だからこそ、問われていることがはっきりと明確になっているため、すでに迷いはありません。これまでと次元の異なる取り組みと覚悟が求められているのは明らかで、慎重かつ大胆に次の5ヵ年中期計画の立案を今年度中に理事の皆さんと相談しながら進めて参ります。演劇が北海道の社会にとって重要なインフラであるとの認識を、更に色濃く根付かせて、北海道で暮らす私たちが安心して楽しく豊かで誇らしくあり続けるために。

 今後もこれまで以上のご協力・ご支援・ご鞭撻を、お願い申し上げます。

2020年9月
公益財団法人 北海道演劇財団
理事長・芸術監督 斎藤 歩

沿 革

前 史

1989年度 レニングラード・マールイ・ドラマ劇場の札幌公演をきっかけに、
「財団法人演劇振興基金(仮称)」準備委員会発足
1993年度 札幌演劇財団(仮称)設立準備会発足
1995年度 北海道演劇財団設立期成会発足

北海道演劇財団設立 (1996年4月1日)

1997年度 「シアターネットかんげき」結成(~2016年3月まで事務局)
ユースシアター始まる(~2001年)
1999年度 TPSスタジオを開設、事務所も同じビル(南5西1北一ビル)に移転
TPS養成所を開設
2001年度 扇谷記念スタジオ・シアターZOOオープン
TPS劇団化(チーフディレクター:斎藤歩/チーフプロデューサー:平田修二)
2002年度 文学座との提携公演『冬のバイエル』が「東京国際芸術祭」に招待
「地域創造アトリエネット」(くらネット)結成
2004年度 扇谷記念スタジオのあるビル(南11西1ファミール中島公園)に事務所、TPS稽古場を移転、TPSスタジオは閉鎖
2006年度 さっぽろアートステージ 札幌劇場祭Theater Go Roundが開始
2007年度 北海道演劇財団とソウル演劇協会の交流協定締結
2008年度 『秋のソナチネ』札幌劇場祭作品賞受賞
2009年度 TPSと劇団青羽が提携し、『蟹と無言歌』(作:斎藤歩/演出:キム・カンボ)を公演し、
札幌劇場祭演出賞受賞
2010年度 北海道演劇財団とサハリン州文化局、チェーホフ劇場と交流協定締結
『クリスマス・キャロル』札幌劇場祭演劇大賞受賞
2011年度 北海道演劇財団と富平文化財団の交流協定締結
札幌演劇シーズンが開始
2012年度 北海道より公益認定を受け、公益財団法人へ移行
TPSは、機構を改め「札幌座」に名称変更
2013年度 チェーホフ劇場(ロシア/ユジノサハリンスク)が、初めて来札しシアターZOO企画・提携公演【Re:Z】の大賞受賞
※【Re:Z】(リ・ゼット):繰り返しZOOに来ていただけることを願った「リピートZOO」の略称
2014年度 ソウル演劇祭主催「ソウル演劇祭」と大田文化財団主催で「亀、もしくは…。」を公演
2015年度
第46回さっぽろ雪まつり大通5丁目環境広場で「冬物語」を4か国語字幕付き(英語・韓国語・中国語・台湾語)で公演(7日間31ステージ)
札幌座第49回公演/札幌演劇シーズン2016‐冬参加作「亀、もしくは…。」を4か国語字幕付き(英語・韓国語・中国語・台湾語)で公演
2016年度 北海道演劇財団設立20周年・扇谷記念スタジオシアターZOO設立15周年を迎える

公益財団法人へ移行

2008年12月に施行された新公益法人制度によって、民間が新しい公共を担う公益財団法人という道が開かれました。北海道演劇財団は、それまでも、演劇を振興し、演劇を通して街づくり、市民活動の促進を行ってきましたが、この改革を受けて、演劇を通した公益事業を推進しようと、2009年3月の理事会で、公益財団法人化への移行を議決しました。
そして、2012年3月、北海道から公益にふさわしいとの認定をいただき、2012年4月1日、公益財団法人北海道演劇財団に移行し、新たなスタートをいたしました。

目 的

北海道演劇財団は、演劇をはじめ幅広い分野における創造活動による人材育成と創造環境の充実に努めるとともに、地域文化の振興とまちづくり及び市民活動の促進を行い、もって豊かな地域社会の発展に資することを目的とします。

演劇の振興事業

  1. 北海道の演劇の向上事業
    (1) 演劇の製作公演等による人材育成事業
    (2) 提携公演による劇団の活動促進支援事業
  2. 地域における演劇に触れる機会の提供事業
  3. 演劇の創造環境改善と演劇を支える市民活動育成事業

特 色

  1. 全国でも数少ない市民参加型の財団法人です。自治体や企業の大きな出損によるのではなく、趣旨に賛同する地域の企業、団体、個人からの寄付を基本財産として設立されました。
  2. 財団の目的や事業内容には、演劇創造や鑑賞機会の提供などのほか、市民による活動を促進し育成援助することがうたわれています。 文化活動を通じて住民市民の地域社会への参加を促し、人間のつながりを基本とする快適な地域社会の実現に寄与しようとするものです。
  3. 演劇の振興に収まりきらない活動内容を含むため、当財団は北海道と北海道教育委員会に双方から許可を受けた共管法人として平成8年(1996年)4月発足しましたが、平成24年(2012年)4月に公益財団法人に移行しました。

情報公開

令和5年度資料

令和4年度資料

令和3年度資料

令和2年度資料

令和元年度資料

平成30年度資料

平成29年度資料

平成28年度資料

平成27年度資料

平成26年度資料

平成25年度資料

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